乳海(原初の混沌)
淀みができ、それが方向性を持ち意思となった。
一つの要素が意味を持ち定まると、次々にあらゆるモノが決定していった。
ある大きな要素が世界を象った。
それがこの遠き地である。
あらゆる形を持ったモノ達は不安定であった。
力あるもの、力なきもの、意思あるもの、なきもの。
全ては先ず形もち、そして崩れ逝き根源に戻ろうとした。
その中で異端なモノ達もあった。
混沌は全てを内包するが故に彼らもまたあるべくしてあったのだ。
彼らは滅びを良しとせずその存在を残す事に力を注いだ。
彼らは世界を安定させようと力を注いだ。
崩れる地を繋ぎ止め、侵食する混沌を防ぐ大気を張った。
彼ら原初達は後に神や聖霊と呼ばれ、滅びに反抗するモノ達の支えとなった。
やがて世界が安定し始めると彼らは存在する為だけに存在するモノを作った。
彼らの半分の力を分け出し溶け合わせ後に古エルフと呼ばれる神人を作った。
世界に放たれた彼らは秩序を与えていった。
彼らと古エルフ達は多くを創造し、そこに力を与えてその多くが力を失っていった。
彼らと古エルフの多くは己を止める事で滅びを遅らせた。
残った神々と古エルフ達は力を減らし、互いに交わり多くの力弱き子孫を作った。
世界は崩壊を遠のかせ、ゆったりとした滅びを受けつつも極めて安定した時間を経過した。
ある時混沌に一つの方向性がまた生まれた。
それはあらゆるマイナスの方向性を持ったものであった。
かつての混沌だけがあった世界ならば直ちに飲み込まれていたモノ達が、
安定を見つけそこで形を成してしまったのである。
多くの原初が眠りに着き力を失った世界では、原初の魔物達に抗するべくもなかった。
楽園は失われ、世界は長く戦いに覆われた。
世界は徐々に崩壊しつつあった・・・。
しかしその時、また根源より二つ分かたれたモノがあった。
光と闇と言う力の塊である。
彼らは分かたれる事で安定し、けして溶け合う事はなかった。
力を失い己を止めていた、神々の中で力あったモノ達は、
それを機に蘇り光と闇の力を分けて振るった。
原初の魔物は砕け散り、無数に分かたれ世界に散った。
そしてまた分けて振るわれた力により世界は光の時間と闇の時間に分かたれた。
溶け合えない力を受けた神々は二派に分かれ荒れた世界を再創造した。
光の大神は光の時間に世界に力を隈なく与えるべく太陽に、
闇の大神は闇の時間に世界にマナを隈なく与えるべく月に、
それぞれ化身し、根源より世界を守るべく空へと上がった。
そしてまた長き時が過ぎ、神々が力を失い己を止めて幾星霜。
力を減じた神や古エルフの末裔はいつしか天人やエルフと呼ばれるモノ達になった。
多くに分かたれ力を細分化された彼らは力を合わす事で世界を作った。
エルフと呼ばれるモノ達は原初から力を引き出す事が出来た。
世界そのモノや木々や海や大気からかつて与えた力を引き出す事が出来た。
人は光と闇を使う事が出来た。
かつて神々が扱ったその法を術として行使した。
第一期 天人の時代
魔術を行使する人々は、神去りし地において最強の支配者であった。
地を天に浮かべ、天を地の中に作りだし、海中に天と地を作った。
ある時一人の偉大な魔術師が戯れに考えついた。
「空の果てには混沌がある。
これは誰もが知っている事である。
では地上の下の更なる下には何があるのであろう。」
運の悪い事に偉大な魔術師は一番の権力者であり、
その考えは実行に移された。
魔術と労働力を一手に費やしたその巨大な穴は世界の中心を目指して掘り進められた。
そして開けてはならない箱が開かれた。
世界の中心は未分化の混沌である。
世界を形作る時にうちに閉じ込められた分かたれなかった混沌である。
到達と同時に溢れ出さんとしたそれを天人達は蓋をして留めた。
階層666階にて溢れ出したそれは665階にて閉じられた。
その作業に費やされた「力」と「マナ」は天人達の秘儀によって集められた。
その一晩に天人の殆どは死に絶え天人の時代は終わった。
第二期 エルフと魔物の時代
天人が滅び、世界が不安定さを増すと、魔物達は活発になった。
かつて戦いに破れ失った力の一部を漏れ出した根源が補ったのだ。
生き延びた天人はその戦いで更に数を減らし、力を失っていった。
その時魔物達に一番勝利を収めたのがエルフ達だった。
彼らは文明を起こさなかったが、自然と共に力を失わずにいた。
エルフ達は魔物に勝利しやがて深き穴へと追いやった。
しかし深き穴には彼らはけして足を踏み入れなかった。
そこには彼らの分け与えし力の眷属は少なく、十分に戦えなかったからである。
故に彼らはそこで兵を退き各々の棲家へと帰って行った。
そして長き時を世界は小さな不安定さを抱えたまま過して行くのである。
第三期 先史文明の時代
天人滅び、エルフが保った世界が長く続き、
徐々に天人の末裔達は数を増やしていった。
かつてのような法や術はほぼ失われたが、それでも力を合わせ文明を築き上げた。
彼らは自然に埋もれた力を利用し、陸や海や空を支配していった。
天まで届かんとする建造物や、海中深く潜る船。
一時は彼らは根源に到達するまでになった。
しかし、外に敵を持てなかった彼らは内へとその極めた力を行使した。
そしてその魔法に匹敵する力を振るうには世界は小さすぎた。
毒を撒き、焼き尽くし、壊し尽くした大戦は7日で世界を原初に戻した。
第四期 そしてまた人の時代
世界は荒れ果てたが、その渦巻く力によって長き時を重ねて元の姿を取り戻しつつあった。
先の大戦で文明を失い数を減らした人も、長き年月を経て国を築ける程にはなっていた。
力あるモノたちが失った力は世界に満ち溢れ。
眠りし神の躯や、神代の遺産、天人の遺産、先史文明の遺産等が世界には満ちている。
大陸暦980年 大陸全土は小国乱立する群雄割拠の時代である。